社会の底辺

23歳の春。

美容業界を逃げ出し、僕はフリーターになっていた。

「自分を向上できる職場はどこだ」

という意識で色んな職場を転々としてみるが、結局はそんな職場はなかった。

どこかの職場や環境に自分を育ててもらう。
そんな都合のいい発想では、いつまでたっても成長はない。

どこで勤めても、「鳥かご」の中にいるのは変わらない。

あちらの鳥かごの方が広い。

あちらの鳥かごの方が楽しそう。

あちらの鳥かごの方がエサが多くもらえる。

そんな事は僕の人生において重要ではなく、
「どうすれば自由な大空へ飛び立つことができるのか」
そんな発想が必要だった。

とは言え、東京で生きていく為にはお金が必要だった。
なのでいつまでもフリーターの仕事を抜け出せず、
歯がゆい生活が続いた。

そして給料の手取りも低い。
電気代を払えず送電が止まって、暗闇の中で生活した事もあった。

ある時は家賃が数ヶ月も滞納して、
飯田橋にある管理会社に呼び出された。

「これからはしっかり支払います。ごめんなさい」

そんな内容の誓約書を書かされたりもした。

そして気づいたら、僕は「日払い」の仕事にまで手を出していた。
一日働けば、日給7000円ほど。
そしてそのあと事務所でお給料がスグにもらえる。
光熱費もまともに払えなかった僕には、好都合の条件だった。

しかし、給料を受け取りに行くこの事務所には、
僕も含めて明日のお金に困るような生活をするような人の集まり。

会話の内容はクズそのもの。最低だ。

 

「今日の現場は時給が50円も高いぞ」

「あっちの現場の監督はウザい」

「昨日スロットで1000円勝った」

「おれが現場では一番年長者だから言う事をきけ」

「あいつ偉そうにしやがって、、」

 

正直、どうでもいいことのオンパレード。

あるとき、現場が一緒だった40代のおじさんが話しかけてきた。

 

「お前はタバコは吸わんのか?」

「はい。」

「それじゃ、酒飲みか?」

「いや、たまにしか飲まないです。」

「じゃぁ、パチンコはやるのか?」

「いや、興味がないです」

「じゃぁ、お前は何を楽しみに生きてるんだ!!!?」

この言葉が僕には衝撃だった。

 

タバコ、酒、ギャンブル。
それ以外に、他に楽しみが無いのか?
あのオッサンの人生の「楽しみ」とはそれだけなのか?

そんな人生はまっぴらごめんだ。

人生の楽しみはもっとあるはずだ。

だけどここにいれば、こんな人たちと同じような人生になってしまう。
ここにずっといるのは自分のしたい生き方じゃない。

ここにいたらダメだ。
そう思った。

起業するために、自由に使える時間を作りたい。

そう思い、正社員ではなくフリーターになったけど、
全くの逆効果だった。

その後、僕はこの日払いの仕事も辞めて、
渋々「正社員」として一般企業で働く事にした。

 

00『目次〜元美容師が自由を手にした物語り〜』

01『世界中が職場で世界中が遊び場になった』

02『理想と現実のあいだ』

03『絶望的将来が見えた』

・04『社会の底辺』 ←今ココ

05『大人になるとは、夢を諦めること』

06『Just Do It !!』

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