理想と現実のあいだ

20歳になるまで、学生時代は北海道で育った。
広い大地のごとく、のびのびと育った。

勉強はできる方ではなかったが、留年はしなかった。
クラスの人気者ではなかったが、一緒に遊んでくれる友達は何人かいた。
異性にモテた記憶はないが、彼女がいたりもした。

いたって平凡、どこにでもいる学生。

オシャレをするのが好きで、
高校生の頃からヤフオクで流行りのブランドの服を買ったりしていた。

そんな事もあって、オシャレそうな仕事、美容師の道を選んだ。
そして憧れだけで就職のために上京。

運良く配属された場所は南青山。

それが「修行」とも呼べる人生のスタートだった。

omote
「表参道ヒルズ」に代表される、表参道、青山エリア。多くの美容師の憧れとされてる場所。

 

「なんて使えないヤツなんだ、、、」

全く「笑顔」という表情が出来ない。
全く元気が無い。暗い。

覇気?なにそれ美味しいの?
そんな感じ。

「新人なんだから、だれよりも明るく大きな声で元気出しなさい」

元々声は小さいし、どちらかと言うと口数が少ないタイプ。
だけど、そんな言い訳が通じるわけもない。
先輩からの指示ができなくて、辛くてたまらなかった。

どう頑張ってもできない。

技術も同期40名の中でほぼ最下位。いつまで経っても成長が遅い。
気も利かない。

先輩達からどんどん嫌われていくのを感じるし、同期からは鼻で笑われていた。

「とにかく気合いと根性だ」

という、なんの計画性も無く、だたの精神論だけで時間をかけて少しずつ上達した。

まわりに追いつくのに精一杯だった。

そして南青山の美容室で働いて一年経ったある日。

早稲田にある事務所に呼ばれた。
そして幹部から告げられた。

田舎の店舗へ左遷だった。

しかもこの異動先は、あまりの売り上げの悪さに、あと半年ほどで閉鎖する店舗だった。

そんなところへ流されたのだ。

「全ては捉え方!ピンチはチャンス!」

本音では思ってもいなかった。
だけど、その当時はそれぐらい自分に言い聞かせないと、やっていけなかった。

華やかな南青山の美容室から田舎の店舗へ異動。
僕はこの会社のお荷物社員となっていた。

「あーアイツ、店舗飛ばされたんだw 可哀想w」

そんな感じの扱いを周りからされていた。

お店の入り口では、スーパー帰りの主婦達が井戸端会議をしている。
商店街の一角の美容室。

とてつもなく田舎に感じた。

「こんなはずじゃ!」

とは思うものの、悲惨な現実は目の前に広がっている。
全く思い通りにいかなかった。

「だいたい、中の中ぐらい。」

と思っていた自己評価が、「ダメ人間」という最低点に日々変わっていった。

おれって、こんなにダメな人間だったんだ。

仕事のできない、使えない人間だったんだ。

そして美容師になって数年。

“お荷物社員” が何店舗か、たらい回しにされていた。
そんなある日、僕はまた早稲田にある本社の事務室にいた。

話しの相手は副社長。
退社の挨拶をしに来たのだ。

「北海道の田舎のお母さんが、必死に東京へ送り出してくれたのに可哀想ねー」

そんな皮肉たっぷりの「贈る言葉」を
言われたが、何も言い返せなかった。

ぐうの音もでない程の正論だった。
悔し過ぎた。

「いつかは見返してやる!!」

そんな根拠の無い、説得力もない考えが頭をグルグル回っていた。

そして仕事の出来ない、ダメ社員の僕は美容業界から逃げ去った。

23歳の冬だった。

 

00『目次〜元美容師が自由を手にした物語り〜』

01『世界中が職場で世界中が遊び場になった』

・02『理想と現実のあいだ』 ←今ココ

03『絶望的将来が見えた』

04『社会の底辺』

05『大人になるとは、夢を諦めること』

06『Just Do It !!』

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